薬剤師について

高齢者と薬

Ⅰ.高齢になると多くの病気にかかりやすくなります

体の働きは加齢とともに低下していきます。また、高齢者はいろいろな病気を持っていることが多く、何種類もの薬を使用する機会が増えます。

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○「相互作用」ってなに?

 2種類以上の薬を同時に服用した場合、薬と薬がお互いに影響しあって、薬の効き目が変化することがあります。これを相互作用と言います。

 服用する薬の種類が多くなればなるほど、薬と薬の相互作用は起こりやすくなります。

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○「副作用」ってなに?

薬を飲んだときに、本来の目的以外の作用が現れることがあります。これを「副作用」と言います。

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Ⅱ.高齢者に副作用が起きやすいのはなぜでしょう?

  1. 身体機能が低下しているため
    人間の身体は、加齢に伴い、肝臓で薬を分解する能力や、薬を腎臓から身体の外へ排出する能力が低下します。また、高齢者は身体の中の水分の割合が少なくなり脂肪が多くなるため、脂肪にとける薬が身体の中にたまりやすくなります。その結果、薬が効きすぎて、副作用が現れることがあります。
  2. 多くの薬を飲んでいるため
    高齢者の多くは複数の病気にかかり、たくさんの薬を飲んでいます。そにため、薬と薬の相互作用が起こる可能性が高くなります。
  3. 日常生活の問題点など
    加齢に伴い、目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったりします。そのため、薬を見間違えたり、薬の飲み方を聞き間違えることも考えられます。
     

Ⅲ.副作用を防ぐには

 副作用には、風邪薬を飲んで眠くなったというような軽い症状から生死にかかわるものまで、さまざまなレベルのものがあります。しかし、副作用は誰にでも起こるわけではありません。個人差(アレルギー体質など)や飲んだときの体調なども影響します。
 重い副作用でも、その前兆として軽い症状が現れることが多いので、この初期症状を医師や薬剤師から聞いて気を付けていれば、大事に至ることはないでしょう。
 副作用をむやみに心配し、必要な薬を飲まないと、病気を悪化させたり治療が長引く原因にもなりかねません。薬は、正しく使えば、副作用が現れる確率は低くなります。

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 薬を飲んでいる時に体の不調を感じたら、一人で不安を抱え込まず、医師・薬剤師に相談しましょう!

Ⅳ.薬の飲み忘れを防ぐために

薬局では、飲む時間ごとに1つの袋にまとめてお渡しする等の工夫を行っている場合もあります。薬剤師に相談してみましょう。

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○もし、飲み忘れたら?

薬によっては、抗生物質など一定の間隔できちんと服用しなければならないものや、糖尿病の薬のように、飲み方を間違えると低血糖をおこしてしまうものもあります。
また、抗てんかん剤などは、血中の薬の濃度をきちんと維持することが大切なため、不規則な飲み方は危険です。

○飲んだかどうか忘れてしまった?

「薬を飲んだかどうか忘れてしまった」ということも意外とあるものです。糖尿病の薬のように、本当は飲んだのに勘違いして2回分飲んでしまったら、かえって危険なものがあります。
そんなことのないように、カレンダーに○をするとか、薬を飲んだ後の包装をとっておくなど、あとからでも薬を飲んだことが確認できるようにしておきましょう。

自分がどのような病気であり、何の目的で1つ1つの薬を飲んでいるのかを医師・薬剤師からよく説明を聞き、自分で正しく理解することが大切です。

Ⅴ.どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

○薬と高齢者の日常生活

高齢者はさまざまな体調の変化が起こりやすくなります。

たとえば、

  • 尿が出にくくなる
  • 目がぼやける
  • 足もとがふらつく
  • 食べ物の味がわからない・・・など

 もしあなたにこれらの症状がでたら、「歳をとったためだ」とか「病気になったかもしれない」などとすぐに思いがちではありませんか?
しかし、これらの体調の変化は、薬でおこる可能性もあるのです。
もちろんすべて薬のせいだとはいえませんし、病気を治すために飲んでいる薬ですから、怖がって勝手に薬をやめるのは好ましくありません。
薬を飲むようになってからの体調の変化は、老化現象だとか年のせいだとか、ご自分で判断せずに、医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。

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○飲む量・期間を守りましょう

 医師から処方された薬を飲んでいて、症状がよくなったので薬をやめた・・・こういった自己判断は危険です。症状が軽くなっても病気そのものが治っていない場合があり、治りかけた病気をまたひどくすることもあります。さらに、高血圧や糖尿病の薬などは、急に薬をやめると危険な場合があります。

 また、薬は飲む量を半分にしたら半分だけ効く、倍飲めば効果も倍、ということはありません。医師は「患者さんが決められたとおりきちんと薬を飲んでいる」という前提で治療の計画を立てます。勝手に薬を飲まないでいると、薬が効いていないと判断し、より強い薬に変える場合も出てきます。飲む量や期間をきちんと守りましょう。

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○処方された薬はあなただけのもの

医師が処方した薬は、患者さん一人一人を診断したり検査した上で、それぞれの症状、体質、年齢などを考えて処方されています。薬局や薬店で買うことのできるいわば万人向けの薬(大衆薬)とは違い、個人にあわせたものですので、人のよっては毒となることさえあります。症状が同じだからといって、あなたの薬を他の人にあげたりするのはやめましょう。

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